***女人禁制について***

世界文化遺産登録にあたって
「大峰山女人禁制」の開放を求める会 にゅうす
<転載承認済み>

「大峰山女人禁制」の開放を求める署名に
ご協力いただいたみなさまへのお礼とご報告


 初夏の侯、みなさまには、ご健勝のことと存じます。
 さて、昨年12月、「大峰山女人禁制」の開放を求める運動を開始し、本年1月からは、署名活動を行いましたが、おかげさまで、3月末日で締め切った署名活動には、北は北海道から南は沖縄まで、12,418名の方が署名してくださいました。

 これもひとえに、本会の呼びかけ人になってくださった方をはじめ、署名活動に協力してくださった方のおかげであり、またその間多くの方からご支援のカンパをいただき、心よりお礼を申し上げます。

 いただきました署名は、4月末までに、「大峰山」に関係するすべての諸機関に、郵送または手渡しで、本会の願うところを、以下の報告のように伝えることができました。また、この間の運動の経過及びマスコミ報道も併せて報告いたします。

 こうしたなか、「大峰山」では、「女人禁制」を解くどころか、本会の運動に対抗するがごとく、新たな「女人禁制」の看板を出し、今後も「女人禁制」を維持していくことを表明しました。しかし、関係機関のなかには、本会の運動に理解を示し、「女人禁制」が時代にそぐわないことを表明されたところもあります。

 現状では、早ければ6月にも世界文化遺産に登録される見通しです。しかし、登録後には、世界各地から女性の入山希望も予想されます。本会としては、「大峰山」がどのように対応するのか、厳しく見守っていきたいと思います。

 こうしたことから、本会では、今後も「女人禁制」の開放を求める活動を続けることとしました。どうぞみなさま方には、従前に変わらぬご支援をお願い申し上げます。

 なお、署名をしていただいたすべての方にお礼とご報告をさせていただきたいのですが、かないません。どうぞみなさまの関係された方々に、本会の思いをいま一度お伝えくださるようお願い申し上げ、この度の署名活動のお礼とご報告とさせていただきます。

敬具

   2004年5月
        世界文化遺産登録にあたって
               「大峰山女人禁制」の開放を求める会
                    共同代表  大林美亀・木津 譲・藤原智代・源 淳子



 〈活動報告と関連の動き〉

2003年11月15日 「大峰山女人禁制」の開放を求める会(仮称)設立準備会結成
2003年12月4日 第1回世話人会
名称を 世界文化遺産登録にあたって「大峰山女人禁制」の開放を求める会」と決定。
共同代表4名を含む15名の世話人を中心として全国に呼びかけ人を募り、開放を求める署名活動を行うことを確認。
2003年12月20日 呼びかけ人の募集開始
2004年1月12日 第2回世話人会
呼びかけ人第一次集約121名 要望書内容の検討
2004年2月8日 第3回世話人会
呼びかけ人202名 シンポジウム開催の検討
2004年2月22日 福井良盟大峰山護持院竹林院住職・吉野町町長に、「大峰山女人禁制」についての聞き取り
2004年2月24日 共同代表が奈良県庁記者クラブにて共同記者会見・新聞およびTV取材
2004年2月29日 第4回世話人会
署名約2000筆を集約 シンポジウム打ち合わせ
2004年3月14日 第5回世話人会
署名約5300筆を集約
シンポジウム打ち合わせ、呼びかけ人および関係機関、報道機関への案内発送、資料作成
2004年3月28日 シンポジウム「大峰山女人禁制を考える」開催(於奈良県女性センター)
約50名が参加
新聞およびTV取材 署名約7700筆を集約
2004年4月4日 第6回世話人会
署名12234筆を集約 提出に向けての打ち合わせ
2004年4月8日 大峰山護持院が「女人禁制」継続を発表
2004年4月9日 署名提出
○内閣府(内閣総理大臣、法務大臣、外務大臣、内閣官房長官宛)男女共同参画局の係官と面会し、「大峰山女人禁制」の現状を説明。
「男女共同参画社会基本法」に則った「伝統、慣習」の見直しの啓発推進について申し入れ。奈良県男女共同参画課に、申し入れの内容を伝えるとの回答。
2004年4月13日 署名提出
○奈良県庁(奈良県知事宛)生活環境部荒木一義部長、中村美栄子次長、男女共同参画課大石令子課長と面会し、「男女共同参画社会基本法」に則った啓発の推進の必要性および「世界文化遺産」に指定するにあたって男女不平等の場に多額の税金が使われていること等を訴えた。
荒木部長が主に対応し「県としては、男女共同参画の啓発をするのみで、介入できない。当事者間で話し合っていただきたい」「女人禁制は伝統的習慣であり、恥の文化にはならない」と語った。
新聞およびTV取材
○奈良県地方法務局(奈良県地方法務局長宛)次長および人権廃護課長と面会し、「大峰山女人禁制」は人権侵害であることを訴えた。そのことについては一定の理解を示された。
2004年4月22日 署名提出
○天川村役場(天川村村長宛)大西友太郎村長と面会し、署名を提出。「あなた方の運動には敬意を表するが、女人禁制を差別だと思う人もいれば、そうでないと思う人もいる」と語った。TV取材
○大峰山護持院龍泉寺(龍泉寺住職宛)岡田悦雄住職と面会し、署名を手渡した。
2004年4月24日 署名提出
○総本山聖護院(聖護院門跡門主宛)宮城泰年宗務総長と雲尾保喜財務部長に面会、「この署名をエネルギーにして『女人開放』にむけて前向きに取り組んでいきたい」との回答を得た。新聞取材
○総本山醍醐寺(醍醐寺座主宛)座主とは面会できず、代理人に手渡す。   
2004年4月25日  署名提出
○金峰山寺(修験本宗管長宛)管長とは面会できず、柳沢真悟副住職に手渡す。
○大峰山護持院喜蔵院(喜蔵院住職宛)
○大峰山護持院竹林院(竹林院住職宛)
○大峰山護持院東南院(東南院住職宛)
○大峰山護持院櫻本坊(櫻本坊住職宛)
  以上の4寺院は住職とは面会できず、代理人に手渡す。
2004年4月28日 大峰山寺が「女人結界門」前に禁制への理解を求める看板を設置
2004年4月29日 署名発送 国連教育科学文化機関(ユネスコ事務局長、世界遺産委員会宛)、国連経済社会理事会(国連経済社会理事会議長宛)、役講社
2004年5月2日 第7回世話人会
署名12418筆を集約 呼びかけ人233名
今までの活動の総括と今後に向けての話し合い
☆世話人会としては、今後も会を継続していく方向で次のように提起したい。
共同代表および世話人会を存続するとともに、事務局体制を強化する。
今後の活動として、寺院や地元との話し合いの継続、奈良県および各市町村議会への請願書の提出、奈良県知事への公開質問状の提出などを考えていきたい。  
2004年5月30日 呼びかけ人の皆様へのお礼と報告を発送
(以上 事務局日誌より)

 たくさんのカンパをお寄せいただきありがとうございました。上記の通り報告させていただきますので、ご確認ください。残金につきましては、今後検討して参りますが、皆様からのご意見もお寄せください。

    シンポジウム
「大峰山女人禁制」を考える
 3月28日、奈良県女性センターにおいて、シンポジウム「大峰山女人禁制」を考える」を開催した。シンポジストは、大林美亀(本会共同代表)、山口正雄(西和歩け歩け歩こう会代表)、垣渕幸子(本会世話人)の皆さんで、本会共同代表の源淳子がコーディネーターとしてシンポジウムをすすめた。

 最初に事務局より、「大峰山」「女人禁制」であることを多くの人に知ってもらうとともに、「女人禁制」に対する様々な方の思いを語り合いたいというシンポジウム開催趣旨と、3月28日現在 約7700人分の署名が集まった報告をして、シポジウムに入った。

 大林さんからは、どのようにして「女人禁制」がつくられ、強化されていったのかを女性史の視点から説くとともに、近代から現代までの開放を求める動きを年代順にあげながら、「伝統」とは何かを問いかけ、「伝統」もまた創造するものであり、悪しき「伝統」を変え、新たな「伝統」を創造する力を発揮していこうと提起した。

 山口さんは、女装して大峰山に登ることで、「女人禁制」の解禁を訴えている方である。日本百名山登頂を目指す女性が山上ヶ岳に行けないのはおかしいと、案内された話をし、妻のリウさんといっしょに山頂で撮った写真も見せながら、「山を私物化するのは間違ってまっしゃろ」と、裏声?も使いながら話されると会場は大爆笑。「登りたいという人は、誰でもいっしょに行きましょう」とおっしゃった。

 本会世話人で、「T(アイ)女性会議なら」の垣渕さんは、「差別的な慣習をなくし、女性が生きやすい社会を」というテーマで、「T(アイ)女性会議なら」「女人禁制」問題にとりくむのは、「女性差別撤廃条約」「男女共同参画社会基本法」「奈良県男女共同参画推進条例」が実現される社会を目ざして活動してきた中で、「女人禁制」を見のがすことができなかったこと。また、行政や寺への要請行動や聞きとりの中で見えてきた女性に対する差別意識の払拭を願って国連へも働きかけ、開放を求める会結成に参加したこと等を語り、欧州議会の「伝統は人権より優先されない」という決議を日本でも実現させたい。また、国連に提訴するためにも、選択議定書の早期批准が必要だと訴えた。

 会場からも、「宗教ではないと寺が言いつつ信者を説得できないのは寺の責任が大きい」「修行といいながらかつてはふもとに買春宿もあった」「地元がかかえる過疎の間題も『女人禁制』を残してきた要因と考えられる」「伝統と言うが『女人禁制』区域は人間の都合によって縮小されているのが現実である」「伝統も人間がつくってきたものであり、今後変えていくべきものであるという視点から、司法判断に持ち込んだり、各市町村で意見書や請願書を出したりすることも検討すべきではないか」という意見も出された。

 最後に、もし、世界遺産登録までに「女人禁制」が開放されることがなくても、開放される日までみんなで今後も活動を続けることを確認しつつ会を閉じた。      

 く参加者の感想から〉

○結界とは何かを考えるきっかけになり、有意義でした。この国の宗教、伝統のいかがわしさを解明していくことの必要性と日常の中で感じる女性排除とつながっていることを解明していくことで、社会問題としての認識が広がっていくのではないかと思います。
(奈良・50代女性)

○(前略)授業でも「女人禁制」の問題を取り扱っています。女子大生の中には残念ながら「伝統は守るべき」と異常に伝統を死守する傾向があり、加えてフェミニズム嫌いが多い状況です。しかしそれも教育の保守化、家庭教育の問題であると思います。正しい情報を受け、そして自分で差別構造を考えてみる姿勢を若い世代が持ってほしいと思います。
(埼玉・40代女性)

○「伝統」「慣習」として長い歴史の中で成立してきたものであるが、社会の変化、人間の考えが変わってきたため「女人禁制」の問題も色々な立場の人たちの理解を得るのは長い時間が必要だと思いますので、あきらめず運動を続けていかないとと思います。
(奈良・70代男性)

○大峰山にしても、大相撲の土俵入りの女人禁制にしても、伝統や慣習を理由とした反対意見が行政・世論から多く聞かれる。しかし、女性はダメで男性はOKという完全なる差別が許されないというのは周知の事実で、なぜ女人禁制の反対はこんなに受け入れられないのかと考えれば、やはり根強いジェンダー意識に基づいているからかなとシンポジウムをお聞きして思いました。
(奈良・20代女性)

〈署名を集めてくださったみなさんのメッセージから〉

○署名を集めるなかで色々な反応が時にはありました。大変でしょうが頑張ってください。
(京都)

○一人善人有ラバ天上大イニ慶コブと申します。いちにちも早い稔がありますようにはるかにお祈り申し上げます。
(新潟)

○奈良に住むようになって十年以上が経ち、健康維持と余暇利用の為にと、数年前から始めた山歩きで、稲村ケ岳からレンゲ辻に下りて山上ヶ岳に上ろうとしたとき、「結界門」を初めて見ました。仰々しさを実感しました。「愚の骨頂」だと感じました。ばかばかしいことだと思いました。彼らの言う「伝統」とは何なのか、今も疑問です。
(奈良)

○こんな状態で、世界遺産に指定されても女性と言う理由だけで、入れないのはしっくりきません。それに性同一性障害の人はどうなるんでしょうか‥l。性別による差別自体が時代遅れだと思います。
(神奈川)

○いつもこの国の女性差別に関しては身をもって体験しております。しかしいつも思っているだけで何一つとして表現することもなく過ごしております。この度これくらいの協力なら私にもできると思い、身近な人に声をかけました。
(大阪)

○友人のスイス人が大峰山から南の方を縦走しました。その時に女人禁制を実見して腹がたちました。この署名用紙をジュネーブに送って彼の同僚にも署名をもらいました。この地域は宗教的だけれど国際的でもありますからね。
(東京)
○毎日新聞の書評欄で養老氏の「こんなことはやめたほうがよい」という記述には驚きました。でも「女だけの場所」もあるんだから「男だけの場所」もあっていいんじやない?という意見が周囲にもけっこう多いのだと改めて感じました。
(東京)

○護持院がだんだん意固地になっている様子が伺えますね。今回の活動が実り禁制解放が実現するのが最良ですが、もしもならなくても社会に問題提起し「禁制存続」の表明を出した護持院の姿勢が間違っていることをマスコミを通じて知らしめられたと思えば、成功だと思います。
(奈良)

 〈世話人からのメッセージ〉

○大峰山は今、清々しい新緑の季節を迎えています。山に登れる日がくるのだろうかと心の隅で思いながらの署名活動でしたが、同じ思いの人に会うごとに思いは強くなりました。誰にとがめられるのでもなく晴ればれとした気持ちで登れるまでガンバりたいと思います!
(大野京子)

○世話人15人がそれぞれの知人への依頼という小さな一歩は、そのまた知人へと短期間に大きな広がりとなり、感動と勇気をいただきました。皆様方と、人権の視点で伝統の創造力に繋がる一歩をまた踏み出したく思います。
(大林美亀)

○粘り強く無理なく、しかしあらゆる方面にあらゆる機会を利用して説得して行くしかないと思います。
(小倉真樹)

○平等への潮流の前に立ちはだかる女人禁制結界石。私たちが洞川結界門をはじめて訪問したのは、2人の会員の熱い思いからでした。女性排除の千三百年の歴史に終止符を打つのは女性の力と連帯。しなやかに、したたかに歩みたい、女人禁制開放実現の日まで‥・。(垣渕幸子)
 ○多くの呼びかけ人や世話人の協力で「女人禁制」の開放を求める連動を史上初めて組織的に取りくみ署名を集めた意義は大きい。そして政府・関係行政機関をはじめ、修験宗三本山。大峰山寺護持院などに提出したことは歴史に残る取りくみである。世話人、呼びかけ人のみなさんに改めてお礼を申し上げたい。大峰山は、禁制を解くことに反対している一部の人たちのものではない。洞川は大峰山の麓にあるが、大峰山は洞川のものではない。
(木津 譲)

○禁制維持のニュース読みました。寺は、寺の経済を牛耳っている理屈の通じない偏見に満ちた頑固な信徒の突き上げに耐えるより、市民活動を無視するほうが楽だろうと思います。行政が動いてくれることを願っています。国立公園に指定されている以上、いくら伝統だ、私有地だといっても木一本切るのも文化財の寺を修理するのも許可がいるわけで「法律は伝統に優先する」ということがわかっていない。世界遺産登録になれば次は国際間題になって日本の恥になることでしょう。
(小森茂之)

○目の前に立ちはだかる結界門は、威圧感があり、リュックを背負った男性がためらいもなく、ゆうゆうと登っていった姿が忘れられない。人間がつくったもので一部の人が不平等感や疎外感を感じるならば人間の手で変えていこう!!希望を持って前進あるのみ。これからも全国からのこのつながりを大切にしたい。
(巽 千津子)

○「すべてを男女平等にする必要はない。伝統なのだからあってもよい」という声があることに驚く。女性であるゆえに排除され苦痛を感じている者の人権を軽んじているという意識が欠如している。「女人禁制」は断じて許せない!継続して訴えていく。   (張 百合子)
 ○何より嬉しいのは連帯の輪がどんどん広がっていると実感できること!登録されてもされなくても開放の日を迎えるまで皆でアピールを続けましょう。貴重な体験を沢山させて頂いて本当にありがとうございました。
(畑 三千代)

○開放を求める会ですばらしい出会いをありがとう。それぞれの持ち味がひとつになり、タブー視されてきた女性差別の伝統、慣習への挑戦。私たちの思いが実現されるにはまだまだ多くの時間がかかりますが、やさしくつながり差別に敢然と立ち向かいましょう。
(藤原智代)

○活動を通して、全国のまだお目にかかったことのない人たちや、身近な人たちと「女人禁制」や「伝統」についての思いを語り合う機会が持てたことがとても有意義でした。このつながりを大切にしながら「女人禁制」を護る人たちとも、意見を出し合っていきたいと思います。
(松村徳子)

○署名活動を通して多くの人のお世話になった。心よりお礼の気持ちを伝えたい。「女人禁制」開放の困難さは、「女性」「宗教」「伝統」というキーワードに集約できる。この三つをクリアすることは、自明としてきた価値や意味への問いかけを必然としている。「開放」への道を期待しつつこうした問いかけをみなさんとともに継続したいと願っている。
(源 淳子)

○署名を頼むと、多くの方は快く引き受けてくださいました。特に、解放同盟のつながりで、「女が入ったらあかんとこやねんでと言いながら名前を書いてくれたで」と応援してくれた人がおっしやいました。頑なな心を解かすには、法を知らせると同時に、知恵とあったかい対話がいると感じました。
(森永雅世)

 大峰山女開放求め署名
市民団体来月まで運動、首相らに提出

 大峰山の女人禁制に反対する市民団体「おおみねん女人きん開放を求める会」は二十四日、小泉首相らに開放を求める署名を提出すると発表した。

要望書などによると、」六月にも「紀伊山地と参詣道」が世界遺産に登録される見通しで、大峰山に世界中から女性を含めた多くの観光客が来ることも予測され、「大峰山が女人禁制を堅持したまま、世界遺産に登録されることを見過ごすことはできない」としている。

 同会は三月末まで全国から署名を集め、小泉首相や福田官房長官など政府関係者や国連教育。科学文化機関(ユネスコ〕などの関係機関や大峰山護持院などに要望書を提出する。

 共同代表の一人で奈良女性史研究会会代表の大林美亀さん(64)は「伝統とどう向き合うかが、問われていると話している。
    2004.2.25 読売新聞朝刊

 「女人禁制 解きたい」
本山修験宗 他の2本山に提案へ

 奈良県の大峰山=3面に「ことば」=の女人禁制を巡り、山を修行の場とする修験三本山の一つ、本山修験宗(総本山・聖護院=京都市左京区)の宮城泰年・宗務総長が24日、女性への開放を求める市民団体との面談で、「すべての者は平等だという宗教上の立場から、信者や大峰の地元の人たちに開放を呼びかけたい」との考えを明らかにした。

 「大峰山女人禁制の開放を求める会」のメンバー14人が聖護院を訪れ、「宗教界は女性差別が厳しく、宗教者自身もそれを良しとしている現状がある」などとして、開放を求める1万2314人の署名の写しを停しゅっ。宮城宗務総長は、「大峰山が世界文化遺産に登録されようとする今が、女人禁制の歴史を考えるいい機会だ」の考えを示すとともに、修験三本山のうち残る真言宗醍醐派(総本山・醍醐寺、東都市伏見区)金峯山修験本宗(総本・金峯山寺、奈良県吉野町)と今年6月に共同で開く研究会で女人禁制を議題に取り上げる考えを明らかにした。

 これに対し、金峯山修験本宗の田中利典・宗務総長は「21世紀に入り、信仰の中で女人禁制とどうかかわるかを考える時期になった」と語り、真言宗醍醐派は「今は答えられない」とコメントした。 【松田栄二郎】
   2004.2.25 毎日新聞

 「女人禁制の撤廃を」
世界遺産登録前に 市民ら、首相に要望

 修験道の聖地、奈良県天川村の大峰山で続く「女人人禁制」について、撤廃を求める市民団体が9日、小泉首相ら閣僚への要望書を約1万2千人分の署名とともに内閣府に提出した。

 大峰山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は今夏に、ユネスコの世界文化遺産への登録が有力視される。要望書は「女人禁制は女性の人権を侵害しており、このままでの世界遺産登録は問題」と国際批判を招きかねない点を指摘し、国などが禁制撤廃へ向けて信徒団体などに働きかけるよう求めている。

 この市民団体は「大峰山女人禁制の開放を求める会」(共同代表・大林美亀奈良女性史研究会代表ら4人)。福島瑞穂社民党党首、岡崎トミ子民主党参院議員ら国会議員や弁護士、歴史研究者など約200人が呼びかけ人となり、1月から全国で署名活動を続けた。同会は今後、ユネスコや奈良県、修験道各宗派などにも同様の要望書を提出する予定という。

 一方、大峰山の五つの護持寺院はこのほど、一女性差別ではなく、宗教的伝統」として禁制維持を申し合わせた。
    2004.4.10 朝日新聞

 修験道の大峰山、世界遺産向け
    「女人禁制やめて」

  市民団体が書名活動

修験道の霊場・大峰山(奈良県天川村)の女人禁制解除を求める書名活動を始めたと、女性史研究者らでつくる市民団体(共同代表・木津譲氏ら四人)が二十四日、発表した。大峰山は「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として六月に世界遺産に登録される見通しだが、「女人禁制のままの登録は性差別を認めることになる」と訴えている。

 大峰山は現在、大峰山寺がある山上ケ岳(標高一、七二〇b)への女性入山が認められていない。修験道の開祖といわれる役行者(えんのぎょうじゃ)没後千三百年と、される二〇〇〇年に解禁の動きもあったが、信徒や地元の反対で立ち消えになった。多くの山岳寺院は、明治時代に禁制を解き、今も解除していないのは大峰山と後山(岡山県東粟倉村)だけだ。

 世界遺産にはギリシャ・アトス山のように女人禁制の修道院もある。しかし、市民団体は「アトス山は原則として修行者しか入らない。一般の男性登山者も入る大峰山と一緒にできない」と主張。三月二十日まで署名活動を続け、政府や関連寺院などに提出する。

 天川村洞川区長の桝谷源逸さん(57)は「女人禁制は男女差別ではなく宗教上の戒律。世界遺産に登録されても伝統を守っていく」と話している。
   2004.2.25京都新聞

       2004年5月30日
          〒634−0831・奈良県橿原市曽我町1166−6
             世界文化遺産登録にあたって
                     「大峰山女人禁制」の開放を求める会  発行

 ○第98号 (明治5年3月27日 太政官布告)

神社仏閣ノ地ニテ女人結界ノ場所有之候處自今被廃止候條登山参詣等可為勝手事

 神社仏閣の地にて、女人結界の場所これあり候うところ、自今、廃せられ候う條、登山・参詣勝手と為すべきこと。